パソコンによる提示モードが第二言語スピーキングの測定に及ぼす影響について-モノロジック・タスクを中心に-
近年、大規模な外国語スピーキング・テストにおいて、パソコンによる評価が増加している。しかし、他のスピーキング・テストと異なり、テスト場面においては話す相手が存在せず、受験者はパソコンに向かって話さなければならない。そのため、パソコンによる提示モード(computer delivery mode)がテストの妥当性に及ぼす影響が問題視されている。従って、本研究は、パソコンと対面式の各提示モードによるモノロジック・タスク(monologic task)における受験者のパフォーマンス及び二つの提示モードに対する受験者態度を比較することにより、パソコンが第二言語スピーキングを測定するに及ぼす影響を解明することを目的とする。
本研究の参加者は、二つの高校と三つの大学からの96名の日本人英語学習者である。受験者に、異なるテスト順序で、パソコンによる二つのモノロジック・タスク、また対面式による同じ内容でのモノロジック・タスクを実施した。テスト終了後、受験者に、テストへの態度に関するアンケートに答えてもらった。受験者のタスクへの応答は、文法、語彙、流暢さと発音の採点項目について分析的尺度で採点された。また、書き起こされた発話は、流暢さ、正確さ、複雑さの指標を計算できるようにコーディングされた。さらに、パソコンによるタスクでの採点スコアに基づき、受験者は、高、中、低レベルの三つのグループに分けられた。
受験者パフォーマンスに関する分析には、パソコンによる提示モードの影響に関して、一致した結果が得られなかった。まず、テスト・スコアにおいて、提示モードによる影響は見られなかった。具体的には、パソコン式と対面式テストの各採点項目のスコアまたトータル・スコアの平均において、t検定による有意差はなかった。因子分析によれば、二つのテストが測定する構成要素の構造は、似たようなパターンを示した。従って、テスト・スコアの観点からは、提示モードによる影響がないと言える。しかし、受験者発話を分散分析で分析したところ、流暢さを示す二つの指標、重複(repetition)とポーズ(filled pauses)において、提示モードによる影響が見られた。すなわち、受験者は、重複の観点ではパソコン式において、ポーズの観点では対面式において、それぞれより流暢であった。また、受験者の英語レベルと提示モードの相互作用は見られなかった。量的分析に加え、観察された発話の違いについて質的分析も行った。
アンケート結果から、パソコン式と対面式テストの両方への受験者態度は、肯定的であることが分かった。さらに、T検定とカイ二乗検定の結果から、受験者は、対面式をより好むことが分かった。対面式は、より楽しく、より受験者の英語力を反映していると思われている一方、パソコン式は、受験者が対面式ほど緊張しなかったことが分かった。以上の結果に基づき、言語評価、テスト開発また第二言語習得研究への示唆と今後の研究課題を示した。