続・マダガスカル手話の語順
箕浦 信勝

マダガスカル手話(TTM)は、純粋な日本語タイプ(OV タイプ)にも、タイ語タイプ(VO タイプ)にも見えない。TTM の語順はタイ語タイプ(VO タイプ)に傾きつつ、揺れを見せる。下位類型[2]側置詞+名詞、[3]所有者+名詞、[4]指示詞+名詞、[5]数字+名詞、[6]形容詞+名詞、[7]関係節+名詞、[10]助動詞+動詞、[11]副詞+動詞、[12]副詞+形容詞、[13]極性疑問文マーカー、[15]内容疑問文マーカー、[17]否定標識に関して、語順が揺れを見せる。この揺れは、TTM が書記・音声マダガスカル語と恒常的に接触していつつ、独自の方向性を目指している可能性によるのか、あるいはデータに複数のレジスターやスタイルが含まれているのか、あるいはFSP 的な理由があるのか、あるいは線状性からの締め付けの緩い視覚・身振りモダリティーによるのか、考察を続けていくことは今後も必要である。
本稿のデータと考察を踏まえて、同様の観察を、書記・音声マダガスカル語とノルウェー手話(NTS)について、今後進める必要がある。書記・音声マダガスカル語は、TTM が恒常的に接触している言語であり、NTS からは、1960 年代、マダガスカルで初めてのろう学校が建てられたときに、ノルウェー人教師によってNTS の手話単語が持ち込まれた。TTM とNTS の同系(cognate)率はそれ程高くなさそうであるが、NTSの統語的特徴がTTMに残存しているかは、今後精査が待たれる。